かの脈絡があるのだろう。それを市長が見た以上厭でも応でも脅迫者の自由にならなければならないという、奇怪な弱点であるのかも知れない。そして市長が怪獣を見るや、ROV《ロブ》、湖、埋もれた都会と絶叫したということだから、不正財宝を発掘したのは、支那新疆の羅布《ロブ》の沙漠の、羅布湖のほとりに相違ない。そして市長は尚叫んで、恐ろしい狛犬といったというから、燐光を纒った怪獣はあるいは羅布湖の岸の辺に住民の尊敬する神殿でもあって、そこの社頭の狛犬と深い関係でもあるのかも知れない。とにかく事件の張本は園長エチガライに相違ないとこう睨んだのでございますが、しかしまさか園長自身が怪獣であるとは思いませんでした」
「夫人の話を聞いただけでそこまで看破したところに君の天才が窺われるね」
 ラシイヌは愉快そうに頷いたが、
「実はね、僕も、正直のところ、動物園で調べるまでは、やっぱり君と同じようにエチガライを疑っていたものさ。あいつが犯人に違いないとね。ところで僕は君の考えより、一つだけ余分に考えたってものさ。それは燐光の怪獣だが、これには必ず何らかの迷信がからまっているだろうと――そこで図書館へ飛んで行って
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