ここの王じゃ。ここの国王に成ったからには、あの水底の地下室の一切の財宝の所有者じゃ! 君の随意にすることが出来る」
 しかし老人は容易のことではこの世を去りそうにも見えなかった。钁鑠《かくしゃく》として壮者を凌《しの》ぎ森林などを駈け歩いても人猿などより敏捷であった。私も老人の真似をしてよく森林を駈け歩き彼らに負けまいと努力した。
 こうして半年が経過した。そして一年が過ぎ去った。
 ある日老人が私を呼んで、種々の鍵を手渡してくれた。そしてどうして一日のうちに大水を自由に動かし得るかそういうことまで話してくれた。それは老人の科学思想がいかに発達しているかを証明するに足るところの霊妙を極わめた装置であって、それを私が知った時にはこの老人を敬う念が以前《まえ》よりは一層加わっていた。
 老人は私の手を握った。
「君は明日からここの王じゃ。彼らを愛してやりたまえ。私は少しく休息しよう」
 こう云って優しく目を閉じた。その日が暮れて夜となり月が天上に輝いている時老人は安らかに死んで行った。
 翌日私達は老人のために新らしい柩《ひつぎ》を拵えた。夜になるのを待ち構えて小丘の上へ葬った。いつも賑や
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