りで空しく水中へ落ちてしまった。いつか私達は渦巻の輪の第三番目にはいっていた。水は輪なりに走りながら時々高く盛り上がり次の瞬間には波を立てて低く落ち窪んだ。私達の船が波に乗って高く空中へ盛り上がった時、私は素早く眼をやって渦巻の中心を見たのであった。その辺一体は白泡に閉ざされ数千の白馬が鬣《たてがみ》を振って踊りを躍っているように見えたが、その白泡の真ん中所に直径半町もあろうかと思われる蒼黒い穴が開いていて、湖中の水はそこを目掛けてただ直向《ひたむ》きに押し寄せていた。穴はあたかも漏斗《じょうご》のように円錐形を呈していて、落ち込む水がそこへはいる滝のようにすぐに落下せずにやはり漏斗形に廻り廻って静かに地底へ潜《くぐ》るのであった。
私は船が波の頂きに一瞬間とどまっている時にこれだけのことを見て取ったので、波が崩れて谷が開けその水の谷へ真一文字に私達の船が突き入った時にはもう水穴は見えなくなった。
この間も船は水穴を目掛けて刻々に進む水勢に引かれて湖水をグルグル廻っている。
何気なく岸の方を眺めて見ると遙か彼方に断崖のように赭黒い色をして聳えている。いつもは岸に擦れ擦れになって湖
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