かのように低く額は落ち窪み無智の相貌を現わしている。それに反して唇は感覚的に膨《ふく》れ上がり鼻より先に突き出ている。鼻翼ばかりが拡がって全然鼻梁のない畸形の鼻は眼と口の間に延び縮みして護謨細工の玩具でも見るようである。
私は、余りの恐ろしさに、思わずダンチョンへ縋ろうとした。
「妖怪だ妖怪だ! いや蕃人だ!」
私は思わず呻いたが、妖怪だと思ったその蕃人の、一番前にいた一匹が藪地からヒラリと飛び上がって喬木の幹へ抱き付きスルスルと梢へ昇るのを見て、それが妖怪でも蕃人でもなく思いもよらない類人猿の有尾人種であることを知った。
「ピテカントロプスだ! 有尾人種だ!」
私はまたもこう呻いて、にわかに失望した眼を見張って、どこかに救い主はあるまいかと前後左右を見廻した。すると同じ恐怖のために気絶しかかっているダンチョンは、私の手を堅く握りながら怯えた声で叫び出した。
「百匹! 五百匹! 一千匹! ※[#「けものへん+非」、145−9]々めが四方から押し寄せて来る!」
なるほど、そう云えば私達を囲んで、木間や藪の蔭や丘の上から黒雲のように叢《むら》がって、蛇のような尻尾を頭の上へピンと押
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