になるからである。手製のパイプへそれを詰めて惜し気なくそれを吹かす時私は真に幸福であった。小憎らしいのは猩々である。遠くの木の股から顔を出して二日でも三日でも見守っている、弓を向けると仰天して周章《あわ》てて葉蔭へ隠れるけれど少し経つとやっぱり覗いている。嫉妬深い獣の習慣《つね》として私と戯れている小猿達を見ると、彼は猛烈に岡焼きして気味の悪い声で吠え立てて威嚇《おどか》そうとするのであった。
 一|哩《マイル》ほど林を行くと蘆《あし》の茂っている川がある。そこには幾匹かの鰐《わに》がいて、獲物の来るのを待っている。ある日私は友人と一緒に――すなわち山羊や小猿を連れてその川の方へ猟に行った。間もなく川の岸へ出た。その岸を私と友人達とは喧騒《さざめ》きながら歩いて行った。すると私の目の前にいた一匹の元気のよい青年の山羊が、水を飲もうとして川へ下りた。とその瞬間褐色をした一本の材木が首を上げた。カッとその口を開けたかと思うと山羊の半身は鞠のようにその口の中へ飛び込んだ。材木と思ったのは鰐であって鰐はそのまま水音を立てて水底深く沈んでしまってどうすることも出来なかった。またある時のことである
前へ 次へ
全239ページ中174ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング