士は智恵を絞って負傷者のために尽くしたけれど、二人だけはその夜息が絶えた。土人の死骸を埋葬してから一行は尚進んで行った。一つの部落へ着いた時、不思議にも部落は空虚《から》であった。一人の土人の姿もない。そこで一行は安心して部落の空地へ天幕を張って、その夜の旅宿をそこに定め各※[#二の字点、1−2−22]眠りにつこうとした。ちょうど真夜中と覚しい頃、突然部落の家々から一斉に焔《ほのお》を吐き出したので、一同は初めて土人達の計略に落ちたことを感付いた。焔はその間も天幕を包んで四方から刻々に襲って来る。立ち昇る火の粉を貫いて雨のように毒矢が降って来る。無智の土人達は火を怖れて消そうともせず顫《ふる》えている。馬や水牛やボルネオ犬は――いずれも荷物を運ばせるために市《まち》から連れて来た家畜であるが――火光に恐れて手綱を切って焔を目掛けて飛び込もうとする。味方は火薬を持っているだけに危険の程度が大きいのであった。火焔が天幕を焼くようになったら自《おのず》と火薬は爆発しよう。五十貫の火薬箱がもし一時に爆発したら、一行百余人の生命《いのち》は粉な粉なになって飛んでしまうだろう!
 ラシイヌもレザー
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