美人を発見《みつ》けようと、四辺をキョロキョロ見廻す様子は、それは全く珍であった。
ラシイヌはおかしさを堪えながら、ダンチョンの様子を見守った。
その時、きょとついたダンチョンの眼がある一所《ひとところ》に据わったので、ラシイヌは「オヤ」と呟きながら、その方角へ眼をやった。はたしてそこには婦人がいた。すなわち楽堂の柱に寄って、黒い面紗《ヴェール》で顔を隠した水色の服の欧州美人が、スラリと彳《たたず》んでいるのであった。
「おや」とラシイヌは婦人を見ると、またも思わず呟いた。というのは面紗《ヴェール》のその女が確かに見覚えがあるからであった。
「ハテナ、いったいあの女とどこで知人《しりあい》になったろう?」
ラシイヌは一瞬間心の中で記憶の糸を手繰《たぐ》ったけれど思い出すことが出来なかった。
その間も楽堂の舞台では、拙《まず》い音楽が続けられていた。そして聴衆《ききて》は根気よく静かに耳を傾けている。
しめやかな、静かな、いと平和な、異国情緒の光景である。
ラシイヌは尚も眼をそばだて、面紗の女とダンチョンの様子を代わる代わるに眺めやった。そして怪しい素振りでもあったら、追っ駈
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