めしく立っていて、それが月光を遮っているので、その辺り一体が暗く見えていた。
(ああいう所には有り余る金が、腐るほど死蔵されているのだろうなあ)
ふとこんなことが思われて、主水はその方を眺めやった。
秋山要介は屋敷町を抜けて、大曾根の方へ歩いていた。
尾張家の相当の使い手の武士を、乞食風情で小屋の裾から、一刀に足を斬ったという――このことが要介には不思議でならず、いずれその乞食は武士あがりの、名ある人間に相違ない、人物を見素性を知りたいものだ、それに自分が武芸者だけに、研究心と好奇心とから、その乞食と逢おうために、酒宴の席から抜け出して、こうして歩いて来たのであった。
そして大曾根に辿りついた。
飛々に農家があるばかりで、後は一面の耕地であり、ただ一所に宏大極まる名古屋逸見家の大屋敷が、この辺り一体を支配するかのように、月光の中に黒く高く、厳しく立っているばかりであった。
土塀を四方に厳重に巡らし、土塀の内側へ植込を茂らせ、夜鳥を宿らせているらしく、時々啼音が落ちて来た。
その屋敷の横を通り、要介は先へ進んで行った。
と、遥かの行手にあたって、掘っ建て小屋が点々と、みすぼらしい形に並んでいるのが見えた。
その方へ要介は進んで行った。
しかしにわかに足を止め、
「はてな」と呟いて凝視した。
小屋から十数人の人影が、バッタのように飛び出して来て、それが一団にかたまって、こっちへ歩いて来るからであった。
なんとなく異様に思われたので、積藁の陰へ身をかくし、要介はしばらく待っていた。
編笠をかぶり、撞木杖をついた、浪人を先頭に立てながら、乞食の一団が近寄って来た。
撞木杖の武士
1
乞食の一団は話し合いながら、逸見《へんみ》屋敷の方へ歩いて行った。
「試し切りに来たらしい尾張藩の武士を、菰垂の裾からただ一刀に、足をお斬りになった先生の腕前、まったく凄いものでございましたよ」と、一人の乞食が感嘆したように云うと、
「あれなどは小供だましさ」と撞木杖の武士は事も無げに、
「足が満足であった頃には、五人であろうと、十人であろうと、撫斬りにしたものだったが」と、感慨深そうにそう云った。
要介は黙って積藁の陰で、そういう話を聞いていたが、彼らがその前を行き過ぎると、その後から付いて行った。
(撞木杖をついている片脚の武士が、尾張家の武士を菰垂の裾か
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