お部屋へとは、お葉やお葉や!」
「あのお部屋へ参ろうではございませんか。……あのお部屋へお母様をお連れして、懺悔と浄罪とをさせようため、十年ぶりにこのお葉は、帰って来たのでございます!」
「お葉、それでは、それではお前は?」
「知っておりました、知っておりました! 知っておればこそこのお葉は、この罪悪の巣におられず、家出をしたのでございます!」
「そんな……お前……いえいえそれは!」
「悪人! 姦婦! 八ツ裂きにしてやろうか! ……いえいえいえ、やっぱりお母様だ! ……わたしを、わたしを、いとしがり可愛がり、花簪《はなかんざし》を買って下されたり、抱いて寝させて下さいました、産みのお母様でございます! ……でも、おおおお、そのお母様が、あの建物で、あのお部屋で……」
「いいえ妾は……いいえこの手で……」
「存じております、何のお母様が、何の悪行をなさいましたものか! ……ただお母様はみすみす[#「みすみす」に傍点]ズルズルと、引き込まれただけでございます。……ですから妾は申しております。懺悔なされて下さりませと……」
「行けない、妾は、あの部屋へは! ……あの時以来十年もの間、雨戸を閉
前へ 次へ
全179ページ中136ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング