ちゃんこ」に傍点]を着た藤八猿が、奥の部屋へ毬のように飛び込んで来たので主税とあやめ[#「あやめ」に傍点]とははっとした。
「まあ藤八だよ!」と叫んだのは、襟を掻き合わせたあやめ[#「あやめ」に傍点]であり、
「独楽を持っている、淀屋の独楽を!」と、つづいて叫んだのは主税であった。
 その前で藤八猿は独楽を持ったまま、綺麗に飜斗《とんぼ》を切って見せた。
「捕らえろ! 捕らえて淀屋の独楽を!」
 二人が藤八猿を追っかけると、猿は驚いて門口の方へ逃げた。それを追って門口まで走った……
 と、土間の宵闇の中に、女猿廻しが静かに立っていた。
「ま、やっぱりあやめ[#「あやめ」に傍点]お姉様!」
「お前は妹! まアお葉かえ!」

 この頃勘兵衛は野の道を、荏原屋敷の方へ走っていた。懐中《ふところ》をしっかり抑えている。主税とあやめ[#「あやめ」に傍点]とが猿を追って、土間の方へ走って行った隙を狙い、奪い取った第一の淀屋の独楽が、懐中の中にあるのであった。
(こいつを頼母様へ献上してみろ、俺、どんなに褒められるかしれねえ。……それにしてもあやめ[#「あやめ」に傍点]と主税とが、あんな所に住んでい
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