」と強気のあやめ[#「あやめ」に傍点]が、主税の後から後を追った。
「お葉や、お前はお八重様を連れて……」
「あい。……それでは。……お八重様!」
二人の女は先へ走った。主税の正面から浪人の一人が、命知らずにも斬り込んで来た。
「怨、晴らすぞ!」と主税は喚き、片膝折り敷くと思ったが、抜き持っていた刀を横へ払った。斬られた浪人は悲鳴と共に、手から刀を氷柱のように落とし、両手で右の脇腹を抑え、やがて仆れてノタウチ廻った。
すると、その横をひた[#「ひた」に傍点]走って、あやめ[#「あやめ」に傍点]の方へ突き進む男があった。
「八重! 女郎《めろう》! 逃がしてたまるか!」
あやめ[#「あやめ」に傍点]をお八重と間違えたらしく、こう叫んで大手を拡げたのは、太夫元の勘兵衛であった。
「汝《おのれ》は勘兵衛! 生きていたのか!」
お高祖頭巾をかなぐり捨たあやめ[#「あやめ」に傍点]は、内懐中《うちぶところ》へ片手を差し入れたまま、さすがに驚いて声をかけた。
「わりゃアあやめ[#「あやめ」に傍点]!」と仰天し、勘兵衛も震えながら音をあげた。
「どうしてここへ※[#感嘆符疑問符、1−8−78
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