ま》に対する欝忿《うっぷん》晴らし、そのためだったように思われます。そのご禁制の大船ですが、もうあの時には九分がたできていて、立派なものでございました。ご主君から渡された竹筒仕込みの地雷で、わたしが焼き払いさえしなかったなら、完成したに相違ございません。庄内川から取り入れた水を、すぐに船渠《せんきょ》へ注ぎ入れ、まず庄内川へ押しいだし、それから海へ出すように、巧みに仕組まれてもおりました。
勢州《せいしゅう》産まれの乞食《こじき》権七《ごんしち》、そんなものにまで身を※[#「にんべん+悄のつくり」、第4水準2−1−52]《やつ》し、尾張家のためとはいいながら、あの立派な船を焼きはらったことは、もったいなく思われてなりません。
底本:「日本伝奇名作全集4 剣侠受難・生死卍巴(他)」番町書房
1970(昭和45)年2月25日初版発行
初出:本全集収録まで未発表
入力:阿和泉拓
校正:門田裕志、小林繁雄
2004年11月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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