ち個人的自由の勝利にして公同的自由の敗亡なり、すなわち行政において工業の賃銀を定め職人の自由〔人文自由の一種〕を保護するは国家主義すなわち干渉主義の勝利にして個人主義すなわち自由主義の敗亡なり。これによりてこれを見れば個人的自由とは差別上の自由にして国家的自由とは平等上の自由、別言すれば個人的自由の極度なり、また国家主義とは政府の干渉を是認する主義にして個人主義とはこれに反し人民の自治を主張する主義なり、世人は今日なおいまだこれらの区別を明らかにせざるがごとし、また人文自由とは社交上の自由にして政治自由とは国憲上の自由なり、しかしてかの自由論派はこの二者を混同したるがごとし。
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改進論派は貧富智愚の差別を深く考量して制限選挙および二局議院を主張せり。この点においては個人的自由の味方にして帝政論派と相近く自由論派とははなはだ遠し。改進論派は政府の干渉を排斥して人民の自治を主張しすなわち個人主義の味方なり。この点においては自由論派とはなはだ近くして帝政論派とはすこぶる遠し。改進論派は貧富強弱の懸隔を放任して優勝劣敗を常視し、政治自由の制限をば是認するも人文自由に係
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