美術上の婦人
岸田劉生
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)画因《モテイフ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)数年|行衛《ゆくゑ》が
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)しわ[#「しわ」に傍点]にも
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\な
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婦人は美くしいものである。
だから婦人は画家にとつて何時の時代でもよき画材とされてゐる。古来からの名画の中には婦人を描いたものは甚だ多い、もし古今東西の美術の中から「婦人」を除いたら実に寂寥たるものであらう。実に「女ならでは夜の明けぬ」は只にこの世のみの事ではない。美術の王国は美のみの国だけに一層に婦人を尊しとするのである。
一体、美術、殊に絵画の極は何と云つても人物画につきると云つても過言ではない程、美術にとつて、人物を描くといふ事は面白い又むつかしい事なのである。古来から美術作品の中その美的内容の最も深いところのものはどうも多く人物画に止めを刺す。
これは何故か、人物画といふものは、人が人を描くのであるだけに、美
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