貧乏物語
河上肇

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)大阪《おおさか》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)文政十二|己丑《きちゅう》の秋

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「敖/耳」、第4水準2−85−13]

 [#…]:返り点
 (例)孤身送[#(ル)][#二]幾秋[#(ヲカ)][#一]

 [#(…)]:訓点送り仮名
 (例)一鉢千家[#(ノ)]飯

〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)〔Unlo:sbarkeit〕
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html

*:注釈記号
 (底本では、直前の文字の右横に、ルビのように付く)
(例)『社会革命の理*』
−−

     序

 この物語は、最初余が、大正五年九月十一日より同年十二月二十六日にわたり、断続して大阪《おおさか》朝日新聞に載せてもらったそのままのものである。今これを一冊子にまとめて公にせんとするに当たり、余は幾度かこれが訂正増補を企てたれども、筆を入るれば入るるほど統一が破れて襤褸《ぼろ》が出る感じがするので、一二文字の末を改めたほかは、いったん加筆した部分もすべて取り消して、ただ各項の下へ掲載された新聞紙の月日を記入するにとどめておいた。ただし貧乏線を論ずるのちなみに額田《ぬかだ》博士の著書を批評した一節は、その後同博士の説明を聞くに及び、余にも誤解ありしを免れずと信ずるに至りしがゆえに、これを削除してやむなくその跡へ他の記事を填充《てんじゅう》し、また英国の食事公給条例のことを述べし項下には、事のついでと思って、この条例の全文を追加しておいた。ただこの二個所がおもなる加筆であるが、しかしそれでさえ、こうして印刷してみると、いかにもよけいなこぶができたようで、むだなことをしたものだと後悔している次第である。過去十数年間私はいろいろな物を書いたけれども、この論文ほどまとまったものはない。自分ではこれが今日までの最上の著作だと思う。と言ったからとて、――念のために付け加えておくが――世間の相場でこれを良書の一と認めてもらいたいなどとい
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