ら発見した。それは或る気温の関係で太陽の周囲に白虹が出来、なお太陽を中心として十字形の虹が現われるのだが、その交叉点が殊に光度を増すので、真の太陽の周囲四ヶ所に光体に似たものを現わす現象で、北極圏内には屡※[#二の字点、1−2−22]見られるのだがこの辺では珍らしいことだといって聞かせてくれた。又私の処で夜おそくまで科学上の議論をしていた一人の若い科学者は、帰途晴れ切った冬の夜空に、探海燈の光輝のようなものが或は消え或は現われて美しい現象を呈したのを見た。彼は好奇心の余り、小樽港に碇泊している船について調べて見たが、一隻の軍艦もいないことを発見した。而してその不思議な光は北極光の余翳であるのを略々《ほゞ》確めることが出来た。北海道という処はそうした処だ。
 私が学生々活をしていた頃には、米国風な広々とした札幌の道路のこゝかしこに林檎園があった。そこには屹度小さな小屋があって、誰でも五六銭を手にしてゆくと、二三人では喰い切れない程の林檎を、枝からもぎって籃に入れて持って来て喰べさせてくれた。白い粉の吹いたまゝな皮を衣物で押し拭って、丸かじりにしたその味は忘れられない。春になってそれらの園
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