農園といふ名になりました。
 私はこの共生農園の将来を決して楽観してゐない。それが四分八裂して遂に再び資本家の掌中に入ることは残念だが観念してゐる。武者小路氏の新しい村はともかく理解した人々の集まりだが私の農園は予備知識のない人々の集まりで而かも狼の如き資本家の中に存在するのであります。併し現在の状態では共産的精神は周囲がさうでない場合にその実行が結局不可能で自滅せねばならない、かく完全なプランの下でも駄目なものだ――この一つのプルーフを得る丈けで私は満足するものでこの将来がどうであるかといふことはエッセンシャルなことゝは思つてゐないものであります。(終)



底本:「日本の名随筆 別巻96 大正」作品社
   1999(平成11)年2月25日第1刷発行
底本の親本:「有島武郎全集 第九巻」筑摩書房
   1981(昭和56)年4月
入力:加藤恭子
校正:篠原陽子
2005年2月20日作成
青空文庫作成ファイル:
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