海の中に、山頂は雲の中に、山腹は雪の中にもみにもまれながら、決して動かないものが始めて君たちの前に現われたのだ。それを見つけた時の漁夫たちの心の勇み‥‥魚が水にあったような、野獣が山に放たれたような、太陽が西を見つけ出したようなその喜び‥‥船の中の人たちは思わず足|爪立《つまだ》てんばかりに総立ちになった。人々の心までが総立ちになった。
 「峠が見えたぞ‥‥北に取れや舵《かじ》を‥‥隠れ岩さ乗り上げんな‥‥雪崩《なだれ》にも打たせんなよう‥‥」
 そう言う声がてんでん[#「てんでん」に傍点]に人々の口からわめかれた。それにしても船はひどく流されていたものだ。雷電峠から五里も離れた瀬にいたものが、いつのまにかこんな所に来ているのだ。見る見る風と波とに押しやられて船は吸い付けられるように、吹雪《ふぶき》の間からまっ黒に天までそそり立つ断崕《だんがい》に近寄って行くのを、漁夫たちはそうはさせまいと、帆をたて直し、艪《ろ》を押して、横波を食わせながら船を北へと向けて行った。
 陸地に近づくと波はなお怒る。鬣《たてがみ》を風になびかして暴《あ》れる野馬のように、波頭は波の穂になり、波の穂は飛沫《
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