舷《ふなべり》のほうへ集まって来た。そして申し合わしたように、いっしょに力を合わせて、船の胴腹にはい上がるようにしたので、船は一方にかしぎ始めた。
 「それ今ひと息だぞっ」
 君の父上がしぼり切った生命を声にしたように叫んだ。一同はまた懸命な力をこめた。
 おりよく――全くおりよく、天運だ――その時船の横面《よこつら》に大きな波が浴びせこんで来たので、片方だけに人の重りの加わった船はくるり[#「くるり」に傍点]と裏返った。舷までひたひたと水に埋もれながらもとにかく船は真向きになって水の面に浮かび出た。船が裏返る拍子に五人は五人ながら、すっぽり[#「すっぽり」に傍点]と氷のような海の中にもぐり込みながら、急に勢いづいて船の上に飛び上がろうとした。しかししこたま[#「しこたま」に傍点]着込んだ衣服は思うざまぬれ透っていて、ややともすれば人々を波の中に吸い込もうとした。それが一方の舷に取りついて力をこめればまた顛覆《てんぷく》するにきまっている。生死の瀬戸ぎわにはまり込んでいる人々の本能は恐ろしいほど敏捷《びんしょう》な働きをする。五人の中の二人は咄嗟《とっさ》に反対の舷に回った。そして互い
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