に釘を打たれて、その夜おせいは食事を取らなかった。実際喰べたくもなかった。
 けれども夜中になると、何んとしても我慢ができないほど餓《ひも》じくなってきた。そっと女中部屋を出て、手さぐりで冷えきった台所に行って、戸棚を開けた。そしてそこにあるものを盗み喰いをしようとした。
 その瞬間におせいはどっと悲しくなった。そしてそこに体を倚《よ》せかけたまま、両袖を顔にあてて声をひそめながら泣きはじめた。
     *    *    *
 父が死んだという電報を受け取ったのは、園がおぬいさんの所に教えに行って、もう根雪になった雪道を、灯がともってから白官舎に帰ってきた時だった。
 隣りの人見の部屋には柿江と森村とが集っているらしく、話声で賑わっていたが、園はそこを覗いてみる気持にもなれないで、そっと素通りして自分の部屋にはいった。
 渡瀬がひどく酔払って白官舎に訪ねてきた翌日から、どうしてもおぬいさんを教えるのはいやだといいだしたので、そしてしきりに園に教えに行けといって聴かないので、彼は已《や》むを得《え》ず、一日おきにまたその家に通うようになったのだった。それがもう半カ月のあまりも続いてい
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