った。父がどうしてこんなになったのか、どう思ってみようもなかった。いくらなんにも知らないおせいにも、自分のような貧乏な、無学な、知り合いもないような人間を正妻に迎えるわけがないのは分りきっているのに、しらじらしい顔つきをして、自分の娘をごまかそうとするらしい父が邪慳《じゃけん》の鬼のようにも思えた。
「お前は何んでも世間の見るとおりに物を見ようとするからいけない。高利貸といえばすぐ鬼のような無慈悲な奴、妾を持つといえばすぐ※[#「けものへん+非」、314−上−2]々《ひひ》のような淫乱者、そう頭から決めてかかるんだが、そういちがいにはいえるもんじゃない。何んでも浅田の話では、見たところは小作りな、あれが評判の梶という人かと思うほど物わかりのいいやさしい人だということだ。それが合田さんの所でお前を二度ほど見かけて、ぜひということになったものらしい。お前がお茶でも持ってでた覚えはないかな。※[#「月+咢」、第3水準1−90−51]《あご》の左の方にちょっと眼に立つほどの火傷のあとがあるそうだが……」
おせいはそれを聞くと身がすくむようだった。体がかたくなった。肩が凝りきった時のように、頸
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