を覗きこむようにした。渡瀬は確信をもって黙ったまま深々とうなずいた。物をいうと泣き声になりそうだった。
「いけませんよ……じゃあ待っていらっしゃいよ」
 待っている間、涙がつづけさまに流れ落ちた。
 渡瀬の眼の前につきだされたのは、なみなみと水を盛った大きなコップだった。渡瀬はめちゃくちゃに悲しくなってきた。それを一呑みに飲み干したい欲求はいっぱいだったが、酔いがさめそうだから飲んではならないのだ。
「や、さようなら」
 あっけに取られて、コップを持ったまま見送っている奥さんに胸の中で感謝しながら、渡瀬は玄関を出て往来に立った。
 雪はますます降りしきっていたが、渡瀬はどうしても自分の家に帰る気にはなれなかった。薄野《すすきの》薄野という声は、酒を飲みはじめた時から絶えず耳許《みみもと》に聞こえていたけれども、手ごわい邪魔物がいて――熊のような奴だった、そいつは――がっきりと渡瀬を抱きとめた。渡瀬の足はひとりでに白官舎の方に向いた。
「おぬいさん……僕は君を守る……命がけで守るよ……守ってくれなくってもいいって……そんなことをいうのは残酷《ざんこく》だ……僕は君みたいな神様をまだ見たこ
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