に吸い取ってしまいそうに見えた。そして読み終えられた書物には少しの油気も残ってはいまいと思わされた。実際園が書物に見入っているところを傍から見ていると、一刻一刻園が成長してゆくのが見えるようで、人見はおいてきぼりを喰いそうで、不安になるくらいだった。といって彼の書見に反対を称《とな》える理由はさらにないのだ。
話題が途切れると、園は静かな口調で、今まで読んだところを人見に話し始めたが、人見にとっては初耳で珍らしい事実が次から次へと語りだされるのだった。そして園は著者の提供した議論に対しても相当に見識があると思われる批評を下すのを忘れなかった。生娘のように単純らしく思われる園の頭がよくこれだけのことを吸収しうるものだ。つまりあいつの頭は学者という特別な仕事に向くようにできているんだと人見は(自分の持っている実際的の働きにある自信を加えて)思った。したがって園の話すところは、珍らしく、驚くべき事実であるには相違ないけれども、人見にとっては直接何んの関係もないことだった。そんなことを覚えていたところが、それは彼にとっては鶏肋《けいろく》のようなもので、捨てるにもあたらないけれども、しまいこ
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