境遇に追いつめられるかもしれません。そんな時が来ても、私がこの農場を解放したのを悔いるようなことは断じてないつもりです。昔なつかしさに、たまに遊びにでもやって来た時、諸君が私に数日の宿を惜しまれなかったら、それは私にとって望外の喜びとするところです。
 この上いうことはないように思います。終わりに臨んで諸君の将来が、協力一致と相互扶助との観念によって導かれ、現代の悪制度の中にあっても、それに動かされないだけの堅固な基礎を作り、諸君の精神と生活とが、自然に周囲に働いて、周囲の状況をも変化する結果になるようにと祈ります。



底本:「惜しみなく愛は奪う」角川文庫、角川書店
   1969(昭和44)年1月30日改版初版
   1979(昭和54)年4月30日発行改版14版
初出:「泉」
   1922(大正11)年10月
入力:鈴木厚司
1999年2月13日公開
2005年11月18日修正
青空文庫作成ファイル:
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