私の足跡に不純な何物をも見出し得ないだけの事はする。きっとする。お前たちは私の斃れた所から新しく歩み出さねばならないのだ。然しどちらの方向にどう歩まねばならぬかは、かすかながらにもお前達は私の足跡から探し出す事が出来るだろう。
 小さき者よ。不幸なそして同時に幸福なお前たちの父と母との祝福を胸にしめて人の世の旅に登れ。前途は遠い。そして暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。
 行け。勇んで。小さき者よ。



底本:「小さき者へ・生れ出づる悩み」新潮文庫、新潮社
   1955(昭和30)年1月30日初版
   1980(昭和55)年2月10日改版49刷
   1986(昭和61)年4月30日発行改版63刷初出:『新潮』大正7年1月
入力:鈴木厚司
1999年2月13日公開
2001年10月1日修正
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