があるのです。つまり、一つの農場の小作人となるのに、五百円とか、千円とかその農場の小作人となるのに小作の既権者から権利を買つて這入るのですな。その為めにしよつちゆう村の中で出這入りがあるのです。景気がよければよいで、その小作権を売つて、割のいゝ他の職業に就く。その為めに、農場に個定する人、つまり永く何代も何代も定在する人ばかりではないものですから、今度の処置についても非常にやり難い点が多いのです。――その為めに、農場の管理者や、村長や、今後の処置を一任した札幌農大の森本厚吉君や、大学の他の諸君とも計つたことですが、その組織に就いて相談してゐるのです。恰度《ちやうど》、あちらからその組合規定が送つて来たのですが、その表題は『有限責任狩太共済農団信用購買販売利用組合定※[#「肄のへん+欠」、第3水準1−86−31]』――随分やゝこしいが、内容の総べてを表題に入れて長たらしくしたものですが、実は共済農団を、共産農団にしたかつたのです。共済なんかといふ煮え切らないものよりは、率直に共産の方がいゝのですからな。ところが、これが又皆の反対を買つたのです。共産といふ字は物騒で不可い。他の文字にして欲
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