もありましたでせうな?
B ありました。資本主義政府の下で、縦令《たとへ》ば一個所や二個所で共産組織をしたところで、それは直ぐ又資本家に喰ひ入られて終ふか、又は私が寄附した土地をその人達が売つたりして、幾人かのプチブルジョアが多くなる位ゐの結果になりはしないか。結極、私がやることが無駄になりはしないか。といふやうな反対意見があつたのです。然し、私は私のやつたことが画餅に帰するほど、現代の資本主義組織が何《ど》の程度まで頑固なものであるか、何《ど》の程度まで悪い結果を生むものであるか、そればかりではなく、折角私が無償で土地を寄附しても、それですら尚農民達は幸福になれないのだといふことが、人々にはつきり分つていゝのぢやないかと思ふのです。私は、その試練になるだけでゝも満足です。一旦手放して、自分のものでなくなつた以上は、後の結果が何《ど》うならうとも、それに就ての未練は少しもないのですが、たゞ出来るだけは有意義に、有効に、その結果がよくなるやうには私も今の内に極力計る積りです。兎に角、今迄ちつとも訓練のない人達のことですから、私の真意が分つてくれて、それを妥当に動かして行くといふことは、な
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