人に年賦か何かで土地を買はして、それでも未だ不可いからといふので、政府から補助を受けることになつてゐると聞きますが、これなんかは全く何《ど》うにかしなければ不可ませんね。
A 実際です。彼等が営利会社か何かと結びついて、社会奉仕などといゝ顔をして利益を得ようといふんですから、第一性根が悪いと思ひます。――ところで……
B ところで、よく分りました。私の場合は、勿論現代の資本主義といふ悪制度が、如何に悪制度であるかを思つたことゝ、直接の動機としては、資本主義制度の下に生活してゐる農民、殊に小作人達の生活を実際に知り得たからです。小作人達の生活が、如何に悲惨なものであるかは分り切つたことですが、先ず具体的に言ひませう。私の狩太村の農場は、戸数が六十八九戸、……約七十戸といふところですが、それが何時まで経つても掘立小屋以上の家にならないで、二年経つても三年経つても、依然として掘立小屋なんですね。北海道の掘立小屋は、それこそ文字通りの掘立小屋で、柱を地面に突き差して、その上を茅屋根にして、床はといへば板を列《なら》べた上に筵を敷いただけ、それで家の中へ水が這入つて来ないやうに家の周囲に溝を作へ
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