化を築こうという人は立ち上がらねばならぬ。同時に、その文化の出現を信ずる者にして、躬《み》ずからがその文化と異なった生活をしていることを発見した者は、たといどれほど自分が拠《よ》ってもって生活した生活の利点に沐浴《もくよく》しているとしても、新しい文化の建立に対する指導者、教育者をもってみずから任ずべきではなく、自分の思想的立場を納得して、謹んでその立場にあることをもって満足しなければならない。もし誤って無思慮にも自分の埓《らち》を越えて、差し出たことをするならば、その人は純粋なるべき思想の世界を、不必要なる差し出口をもって混濁し、なんらかの意味において実際上の事の進捗《しんちょく》をも阻礙《そがい》するの結果になるだろう」と。この立場からして私は何といっても、自分がブルジョアジーの生活に浸潤しきった人間である以上、濫《みだ》りに他の階級の人に訴えるような芸術を心がけることの危険を感じ、自分の立場を明らかにしておく必要を見るに至ったものだ。そう考えるのが窮屈だというなら、私は自分の態度の窮屈に甘んじようとする者だ。
私のいった第一の種類に属する芸術家は階級意識に超越しているから、私の
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