、皆な腹減らかいて待って居ったのに。」
「お、そうか/\、有り難い。今食べるぞ。」と言ったが中々食べかけなかった。
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「山高帽子が流行して、
禿げた頭が便利だね。オッペケペ……」
[#ここで字下げ終わり]
こう唄って「ハハゝゝ」と大声に笑った。
母はもどかしそうに、
「もう関わんと先に食べんかの」と恭三に向って言った。
「お父さん、少し食べないと、夜またお腹《なか》が減《す》きますぞ。」と恭三はすゝめた。
父は一寸頭だけふり向けて恭三の顔をじろりと眺めた。充血した眼は大方ふさぎかゝって居た。てか/\と赤光に光った額には大きな皺が三四筋刻んだ様に深くなって居るのが恭三の眼にとまった。
「さあ早う、お汁が冷《さ》めるにな。」
母は自烈体《じれった》そうに言って箸を取った。
「うむ……。」と父は独り合点して又笑った。「今日は本当ね、面白い祭じゃった。」
「一寸祭の話でもして聞かせて下さい。」と恭三は飯を盛りながら言った。
「よし/\。」
父が祭の話をし始める時分には皆な飯を済まして居た。それでもまだ彼は食べかけなかった。そして種々と祭の話をした。同じこ
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