恭三の父
加能作次郎

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)予《かね》て

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大方|端書《はがき》であった。

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符二つ、1−8−75]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)それ/\
−−

    手紙

 恭三は夕飯後例の如く村を一周して帰って来た。
 帰省してから一カ月余になった。昼はもとより夜も暑いのと蚊が多いのとで、予《かね》て計画して居た勉強などは少しも出来ない。話相手になる友達は一人もなし毎日毎日単調無味な生活に苦しんで居た。仕事といえば昼寝と日に一度海に入るのと、夫々《それ/\》[#ルビの「それ/\」はママ]故郷へ帰って居る友達へ手紙を書くのと、こうして夕飯後に村を一周して来ることであった。彼は以上の事を殆《ほとん》ど毎日欠かさなかった。中にも手紙を書くのと散歩とは欠かさなかった。方々に居る友達へ順繰《じゅんぐり》に
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