れが初めてです。南から東へ三ツヶ谷、氷ノ山、鉢伏、滝川、妙見、蘇夫等が小代谷を距てて大きく聳えています。西の方は少し林にかくれますが、広い高原の向うに扇ノ山が雄大な尾根を左右に張っていて素敵です。二月頃はどこでもラッセルに苦しみますが、今は雪がしまっているので随分楽です。下りはよくころびましたが、それでも早く、カンバへ下ったのは三時頃でした。
 十九日、今日は扇ノ山へ登って、北尾根をズーと下の村へ下る予定で、午前七時に出発し、地図に道が書いてある、九一一メートルの三角点のある青山という尾根を途中まで登り、右の谷へ入ります。谷を上ってちょっと行ったところで、村の人が炭を焼いていますから、そこまではスキーをかついで行きました。そこから谷を行く予定でしたが、気味が悪いのですぐ右の尾根へ登ります。この尾根はズーと下の方へ延びた石小屋というなかなか急な尾根で、二〇〇メートルほど登るのに一時間半ほどかかりました。登り切ってから割合楽で、菅原の人が烏ヶ丸と言っている扇ノ山へ着いたのは十一時でした。頂上は木が少ないので、眺望はとても雄大です。ただ春霞のため伯耆《ほうき》の大山《だいせん》が見えなかった
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