へ登りて進む、困難なり。河原に下りて雪渓を下り、左の谷の雪渓を遡る。それより八峰を眺めながら右の谷へと進み急傾斜を登れば谷つき森林となる。これを突破すれば雪田あり、これ池なり。ここより上の山の肩を見れば小屋あり、すなわち池ノ平の小屋なり。八時半ここを出発、池ノ平山の中腹を廻りて進む、雪渓にて道つきたれば、雪渓を下る、急峻にしてこわし、割合辷らず下りて小黒部本流に出で大雪田を下る。雪渓切れたれば、右の尾根へ道を求めて、河原に出で橋を渡り左を進み、あるいは尾根をあるいは河原をあるいは川を徒歩等困難せり、なかにも急流徒歩の折等は流されんとして命からがら岸へ飛びつき、着物等濡らす、尾根を進みまた下りて河原に出で、流れゆるきところを流されつつ下れば松高山岳部の昼食記念の書きたるあり(この辺川の出合なり)安心せり、右手に道を見、それを進む、分りよき道なり、嬉しくもう大丈夫と思い歌を唱う。黒部本流へ合する前、道は尾根を急に登れば少々不安なりしも道他になきようなれば、これを進む。尾根頂上へ登り切って左手にすぐ下る。下り切ればすなわち祖母谷《ばばだに》温泉にいたる広き道なり。ここへ出でたるときの嬉しさ例
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