きた」と言ってラッセルを代ってくれた。この附近は風が良く当るので板状雪になっているところもある。なおも右山で中腹を巻きながら進むと、弘法より四時間ほどで尾根はぐっと右へ曲ってしまい、前面に天狗平が現われてくる、ちょうど立山の連峰が夕日に焼けてとても綺麗である。天狗平の小屋は地図の鏡石から東南東八〇〇メートルほどのところと思われる。
 天狗平の小屋には天狗岳に面した南窓から入る。寝室は二階で、寝床が一部分押入のように二段になっているところもある。小屋番がいてストーブは赤々と燃えているし、なんにもしないでいて暖い御飯がたべられるので、こんな高い山の上だと思われない。ちょうど山の先輩杉山さんが泊っておられて殊に賑かであった。杉山さんの話では今日は下の方こそ霧がかかっていたが、上の方は良いお天気で立山頂上の大観はすばらしかったとのことだ。小屋番はおとなしい男であったが、若い案内二人と夜遅くまで話をしていて耳障りであった。(しかし可哀想にもこの冬東京からきたパーティのお供をして立山へ登り、途中ひどい吹雪に会い、皆と一緒に雪の孔の中に避難していたが、二、三日目にとうとうこの小屋番だけが凍死したそう
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