岳と東鎌とのあいだの鞍部附近は夏でも良くないところだから、縦走するとしたら相当時間がかかるであろう。燕岳への尾根は全く広々としていて頂上までならすぐ行ってこられそうに見えるがなんら興味が起らない。すぐ常念の小屋へ引返し荷物をまとめて再び一ノ沢へ下る。乗越から少し下ると霧が深く雪がちらちら降っているほどで、方角もわからないままいい加減に下って行ったが、やはり登ってきた谷と同じような谷へ入った。谷の雪は相変らず軟くよくもぐるが、下る方は案外楽で登りとは比較にならなかった。で、この谷は常念山脈からの降路としては最良のものに違いないと思った。この晩冷沢の炭焼小屋に厄介になった。小屋主は越中小川温泉山崎村羽入からきている長津という人であった。
冬山の第一の危険は雪崩であるが、初冬の雪崩は殆んど一次(新雪)のもので、真冬や春のようにどか雪の降ることが少ない。また二次―高次(旧雪)の雪崩は春のように恐ろしく気温が高くなったり、大雨が降る等ということもないから、あまり心配はない。天候は春より変りやすいが、ウェーブが小さく大荒れがないので山へ登れない日は殆んどない。気温はこの山行で十一月三十日夜常念の
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