を登ると岳樺《だけかんば》のまばらに生えた広い尾根に出ることができた。ここまでくると雪が降り出して吹雪模様になってきたので、毛皮を着込んだり、コッヘルで甘納豆をたいてカロリーをとったりして戦の準備をした。しかしこの尾根は風がよく当るので雪が締っていてアイゼンで楽に登れた。それを登り切ると常念乗越で雪庇等もなく風のために雪も殆んど吹き飛ばされたガラガラ道が常念の小屋までつづいている。小屋は常念岳に面した方の戸が完全に出ていて難なく入れた。雪の多い三月ごろなら一ノ俣に面した西側の窓から入る方が楽であるとのことだ。小屋はなかなか立派で特別室等雪の入っていないところが多く、寝具の設備もある。
 翌日は霧が深い上、非常に強い風が吹きまくっていてとてもスキーをかついでは歩かれないので、まず常念へ、から身で登る。常念は雪が殆んど吹き飛ばされてガラガラで夏と同様の時間で登れる。前常念とのジャンクションから頂上までは本沢へ向って相当大きな雪庇がつづいていた。当にしていた真正面の槍・穂高の勇姿には接することができなかった。小屋へ帰った頃には天候がだいぶ良くなり、青空が見え出したので、槍へ行こうか、上高地へ
前へ 次へ
全233ページ中144ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
加藤 文太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング