な川が流れているので、しばしば高廻りをさせられた。赤沢岳から底雪崩の凄い奴がたくさん押出しているし、暗くなり雪も止まぬので随分弱った。一ノ俣の小屋には法政の人々が泊っていたので大変御馳走になった。ルックザックを干して寝たら、夜中には火の中に落ちてだいぶ焼けてしまった。僕は山では火の恩恵に浴されないらしい。
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四月一日 快晴 一ノ俣一〇・〇〇 唐沢谷入口一二・三〇 奥穂高の岩場四・四〇―五・二〇 唐沢岳五・四〇 横尾岩小屋一〇・三〇
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今日はいい天気になって、大喰岳がモルゲン・ロートに燃えている。法政の人に針と糸を貰ってルックザックを縫い、不要の物は小屋に置いて、その人達と一緒に一ノ俣を出発する。横尾の出合までは二月よりズッと悪くなっている。法政のパーティは上高地へ下る。横尾谷は川床伝いに登る。屏風岩から塵雪崩が盛んに落ちて、昨日の新雪は黒い岩に変ってしまう。唐沢谷には北穂高の東尾根から相当雪崩が出ている。二六〇〇メートルくらいまで登ってからアイゼンに変える。脛まで潜るところもあるが雪崩の跡を伝って肩へ登った。寒い風が吹いている。奥穂の
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