を脱け切つたよさを、形にも色にも文樣にもみせてゐる。
日本に傳世品としていゝものが澤山遺存してゐる。又發掘品も多數出て世界の市場を騷がせてゐる。何といつても雲鶴手、三島手の如き象嵌して裝飾したやり方は朝鮮の誇つていゝ技術である。日本の茶人の間には三島手を呼ぶにしても、禮賓とか花三島とか、いろ/\味のある名をつけてゐる。刷毛目は大邱に近い鷄龍山から窯跡が發掘されたゝめ、戸籍がわかつてきた。傳世品は兎に角、發掘品は一時百金を唱へたが近頃は割合に手輕く手に入れられる。
〔李朝物〕
所謂李朝物は大正中期以後今日まで異常な流行をみた。文樣にしても染付、繪高麗式の鐵砂文、辰砂。釉にしても白、黒、飴、海鼠、いろ/\の發色をしてゐる。
第一形態からして李朝風をなし、ロクロの削りにも口つくりにも特色を示してゐる。多く實用品であつて裝飾品は少ない。酒壺、油入、漬物入等より筆筒、水滴の文房具から各種各樣のものをこしらへてゐる。比較的安價で手に入れ樂しむことが出來る。但し同じ李朝でも日本の明治になつて燒いてゐるのもあるが、古いほどよく、殊に李朝が興つた頃の作品には時代が反映してゐて、堂々たる力がはいつてゐる。
日本
日本の燒物を、支那、朝鮮の如く大ざつぱに語ることは控えたい。それは讀者諸氏が余りに身邊に親炙してゐられるからである。たゞ支那、朝鮮の影響を受けて發達したものであり、それが日本化されて、そこに生命を見付け出されたところのものであることを知ればよい。
青磁にしても、九州の鍋島だとか、攝津の三田だとか、なか/\うまく支那の技法をとり入れてゐるが、斯ういふことは「陶器全集」の中へ入れたいと思つてゐる。白磁に就ては語らなかつたが、支那、朝鮮の白磁は隨分日本人に喜ばれ、また日本の物とされて造られてきた。
茶人に愛さるゝ井戸、熊川《こもがい》、三島、そば、伊羅保、刷毛目、各種の茶碗など高麗から李朝初期に亙る朝鮮の所産であるが、日本も亦豐公の「やきもの戰爭」以來、九州その他で、これら朝鮮所産の物の模倣をやり軈て日本人の物としてしまつてゐる。だから染付、赤繪、等々にしても日本の物は支那傳と朝鮮傳とに岐れ、それを日本化したところに面白味があるのであつて、これらのことを成るべく正しく明かにしようといふのが、私の「陶器全集」の目的の一部でもあるわけだ。
日本物はこ
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