相束ねず、ほゞ慷慨激昂の氣なし。予又甚だ之を憂ふ。因りて謂もへらく、上毛の草津温泉は、疥を治すに效あり、兒をして澡浴して疾を療し、兼ねて※[#「覊」の「馬」に代えて「奇」、第4水準2−88−38]旅の艱を知らしむれば、これ兩得なり。』
[#ここで字下げ終わり]
これ安積艮齋の紀行の一節也。げに、親の心は、さもあるべし。予にも三子あれども、幸に艮齋の子の如き病氣なし。たゞ余は旅行を好むこと甚しく、旅行の益を熟知す。その益を兒等にも得させむとて、折々旅行に伴ふ。さは云へ、親につれられての旅行は、所謂可愛き子は旅させよの眞意を得たるものに非ず。單身獨歩にして、よく艱苦缺乏と鬪ひて、はじめて可愛き子の旅といふべきもの也。然し、それは、十七八歳以上の事也。十歳内外より十五六歳までは、をり/\つれてゆきて、旅行の趣味を知らしめ、脚力を養はしめ、十七八歳に至りて、始めて獨りにて突き放さむとす。余のをり/\子供をつれゆくは、其意實に茲に存す。結果を數年の後に期する也。
今年の夏は、われ鹽原の勝を探りたり。又那須の勝を探りたり。更に又遠く陸奧の十和田湖の勝を探りたり。長子、同遊を乞ふ。許さず。一人に
前へ
次へ
全5ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大町 桂月 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング