げ]
此去春風二百程。青鞋好欲[#レ]趁[#二]新晴[#一]。待[#レ]君未[#レ]至坐敲[#レ]句。籬外流鶯時一聲。
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詩成ると共に、二子至る。連日の雨は霽れたれど、空はくもりて、風寒き春の朝なり。千住、松戸を經て、我孫子まで徒歩し、そこより汽車に乘る。大利根を過ぐれば、筑波山近く孱顏を現はし、秀色掬すべし。一絶を作る。
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又拭[#二]涙痕[#一]辭帝城[#一]。江湖重訂[#二]白鴎盟[#一]。天公未[#レ]使[#二]吾儕死[#一]。到處青山含[#レ]笑迎。
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土浦にて汽車を下る。一帶の人家、霞ヶ浦に接す。白帆斜陽を帶びて、霞にくれゆく春の夕暮いとあはれなり。笹本といふ旅館に一泊す。
明くれば、四月六日なり。路を北條に取り、神郡村を通りこせば、筑波山直ちに面に當りて屹立す。雙峰の天に聳ゆるを馬耳に譬ふるは、已に陳腐なり。強ひて此山を形容すれば、蝦蟇の目を張つて蟠るに似たりともいふべき乎。筑波の市街は、山腹、即ち蝦蟇の口の上に在りて、層々鱗次す。當年士女が此に來りて蹈舞せし歌垣の名殘は、今も絶えずして、筑波祠前
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