千六百五十三尺、奧羽第一の高山は羽後なる鳥海山の七千三百五十九尺也。關東にて有名なる筑波山は二千八百九十尺、箱根の神山は四千七百四十八尺、日光の男體山は八千百九十九尺、淺間山は八千三百八十九尺也。ともかくも八千尺以上となれば高山なるが、本島中八千尺以上の山は、信濃を中心として、その附近にのみ集まれり。一萬尺以上の高山は富士山を除きては、唯※[#二の字点、1−2−22]赤石山系と飛騨山脈とに在り。總稱して日本アルプスといひ、細別して、飛騨山脈を北アルプスと云ひ、赤石山系を南アルプスといふ。名はどうでも好きやうなるも、元來言靈の幸はふ國也。アルプスでは、山靈恐らくは首肯せざるべし。富士山以外、萬尺の山は、唯※[#二の字点、1−2−22]この兩處にのみあることなれば、南アルプスの代りに南萬尺、北アルプスの代りに北萬尺、總稱して日本高嶺とでも云ひたきもの也。[#地から1字上げ](大正五年)



底本:「桂月全集 第二卷 紀行一」興文社内桂月全集刊行會
   1922(大正11)年7月9日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
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