勿論御承知のこととは思いますが、絞死による屍体の血液は比較的長時間に亙《わた》って流動状態にあるものですから、死後数時間を経てロープから振り落された屍体といえども、破壊された頭部の傷口からアスファルトの上へ、生々しく出血します――」
言いおわって喬介は改めて空を振り仰いだ。
九月の美しい青空の中に、くっきりと浮び上った夢の様な広告気球《バルーン》は、この奇妙なデパートの絞刑吏は、折からの微風に下腹を小さく震わせながら、ふわりふわりと漂っていた。
底本:「本格推理展覧会 第三巻 凶器の蒐集家」青樹社文庫、青樹社
1996(平成8)年3月10日第1版発行
入力:大野晋
校正:はやしだかずこ
2000年12月14日公開
2000年12月16日修正
青空文庫作成ファイル:
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