に覚され、何事ならんと甲板に走り出るに船は一の湾口にあり、驚きて傍への人に問へば下田港なりと答ふ。眼を転じて見れば既に暁ちかしと見え、先ほどまで高かりし月既に西の水際にかゝれり。又東方を見れば煙波中遥に一炬火の如きあり、これ伊豆の大島なりと。湾内漁火しめりて波音高かし。一ゆりして船うごく。月已に落にきとみえ、少しくくらうなりて星かげあらはる。もや立て籠めて遠くは見えず。相模灘に近きたりと覚しく波少しくはげしうなりて船も動揺するなり。
底本:「日本の名随筆58 月」作品社
1987(昭和62)年8月25日第1刷発行
底本の親本:「定本 上田敏全集 第六巻」教育出版センター
1980(昭和55)年5月
入力:土屋隆
校正:門田裕志
2006年9月21日作成
青空文庫作成ファイル:
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