甚しい自惚れであり、事實上明かに誤りであつたことを認める。また人類の一員として、既に世界が最終戰爭時代に入つていることを信じつつも、できればこれが回避されることを、心から祈つている。しかし同時に、現實の世界の状勢を見るにつけ、殊に共産黨の攻勢が激化の一途にある今日、眞の平和的理想に導かれた東亞連盟運動の本質と足跡が正確に再檢討せらるべき緊急の必要ありと信ずる。少くもその著想の中に、日本今後の正しき進路が發見せらるべきことを確信するものである。
四、我が理想
イ、超階級の政治
マルクスの豫言によれば、所謂資本主義時代になると社會の階級構成が單純化されて、はつきりブルジヨアとプロレタリアの二大陣營に分裂し、プロレタリアは遂に暴力革命によつてブルジヨアを打倒するといわれている。しかしこの豫言は、今日では大きく外れて來た。社會の階級構成はむしろ逆に、文明の進んだ國ほど複雜に分化し、ブルジヨアでもプロレタリアでもない階級がいよいよ増加しつつあり、これが社會發展の今日の段階における決定的趨勢である。共産黨はかかる趨勢に對處し、プロレタリアと利害一致せざる階級或は利害相反する階級までも、
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