費が問題でなく国家の生産能力が事を決定する。国防献金ももはや問題とならない(但し恤兵《じゅっぺい》事業等は郷党の心からなる寄附金による事が望ましい)。
 資産家特に成金を寄附金の強制から解放し、彼らの全力を発明家の発見と幇助《ほうじょ》に尽さしめる。国家の機関は発明の価値を判断して発明者には奨励金を与え、その援助者には勲章、位階、授爵等の恩賞をもって表彰する。一体統制主義の今日、国家の恩賞を主として官吏方面に偏重するのは良くない。恩賞は今日の国家の実情に合する如く根本的に改革せねばならぬ。信賞必罰は興隆国家の特徴である。
 発明は単に日本国内、東亜の範囲に限る事なくなるべく全世界に天才を求めねばならぬ。
 しかし科学の発達著しい今日、単に発明の奨励だけでは不充分である。国家は全力を尽して世界無比の大規模研究機関を設立し、綜合力を発揮すべきである。発明家の天才と成金の援助で物になったものは適時これをこの研究機関に移して(発明家をそのまま使用するか否かは全くその事情に依る)、多数学者の綜合的力により速やかにこれを大成する。
 研究機関、大学、大工場の関連は特に力を用いねばならない。今日の如くこれらがばらばらに勝手に造られているのは科学の後進国日本では特に戒心すべきである。
 全国民の念力と天才の尊重(今日は天才的人物は官僚の権威に押され、つむじを曲げ、天才は葬られつつある)、研究機関の組織化により速やかに世界第一の新兵器、新機械等々を生み出さねばならない。
 次は防空対策である。何れにせよ最終戦争は空中戦を中心として一挙に敵国の中心を襲うのであるから、すばらしい破壊兵器を整備するとともに防空については充分なる対策が必要である。
 恐るべき破壊力に対し完全な防空は恐らく不可能であろう。各国は逐次主要部分を地下深く隠匿する等の方法を講ずるのであろうが、恐らく攻撃威力の増加に追いつかぬであろう。また消極的防衛手段が度を過ぎれば、積極的生産力、国力の増進を阻害する。防空対策についても真に達人の達観が切要である。
 私は最終戦争は今後概ね三十年内外に起るであろうと主張して来た。この事はもちろん一つの空想に過ぎない。しかし戦争変化の速度より推論して全く拠り処無いとは言えぬ。そこで私は「世界最終戦論」に於て、二十年を目標として防空の根本対策を強行すべしと唱道した。
 必要最少限の部門はあらゆる努力を払って完全防空をする。どれだけをその範囲とするかが重大問題である。見透しが必要である。
 その他はなるべく分散配置をとる。そこで「最終戦論」で提案したのは、
 第一に官憲の大縮小である。統制国家に於てはもちろん官の強力を必要とする。しかし強力は必ずしも範囲の拡大でない。必要欠くべからざる事を確実迅速に決定して、各機関をして喜び進んで実行せしむる事が肝要である。今日の如くあらゆる場面を総て官憲の力で統制しようとするのは統制の本則に合しないのみならず、我が国民性に適合しない。民度の低いロシヤ人に適する方法は必ずしも我が国民には適当でない。この見地から今日の官憲は大縮小の可能なるを信ずる。官憲の拡大が人口集中の一因である。
 第二は教育制度の根本革新である。日本の明治以後の急発展は教育の振興にあったが、今日社会不安、社会固定の最も有力な原因は自由主義教育のためである。教育は子弟の能力によらず父兄の財力に応じて行なわれる。その教育は実生活と遊離して空論の人を造り、その人は柔弱で鍛錬されておらない。勇気がない。勤労を欲しない。しかもこの教育せらるる者の数は国家の必要との調和は全く考えられていない。非常時に於て知識群の失業が多いのは自然である。あらゆる方面から見て合宿主義時代に全国民が綜合能力を最高度に発揮せしむる主旨に合しない。中等学校以上は全廃、今日の青少年義勇軍に準ずる訓練を全国民に加え、そのうち、適性のものに高度な教育を施し、合理的に国民の職業を分配すべく、教育と実務の間に完全なる調和を必要とする。そうすれば自然都市の教育設備は国民学校を除き全部これを外に移転し得る。都市人口の大縮小を来たすであろう。
 第三には工業の地方分散である。特に重要なる軍事工業は適当に全国に分散する。徹底せる国土計画の下にその分配を定める。大河内正敏氏の農村工業はこの方式に徹底すれば日本工業のためすばらしい意義を持ち、同時に農村の改新に大光明を与える。取敢えず今日より建設する工業には国家が計画的に統制を加うべきである。
 以上の方法をもってして都市人口の大縮小を行ない、しかも必要なる政治中心、経済中心は徹底せる防空都市に根本改革を断行する。各地方は一旦事ある時、独立して国民の生活を指導し得る如く必要の処置を講ぜねばならない。
 右の如く大事業を強行するだけでも自然に昭和維新は進
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