は今日以上の統制が必要である。防空総司令官を任命(成し得れば宮殿下)し、これに防空に任ずる陸海軍部隊および地方官憲、民間団体等を総て統一指揮せしめる。
 持久戦争であるから上述の軍需品の他、連盟の諸国家国民の生活安定の物資もともに東亜連盟の範囲内で自給自足し得る事が肝要である。即ち経済建設の目標は軍需、民需を通じて、統一的に計画せられねばならない事は言うまでもない。
 アメリカでさえ総ての物資は自給自足をなし得ないのである。最少限度の物資獲得の名に於て我らの力の現状を無視していたずらに外国との紛争を招く事は充分警戒を要する。戦争は最大の浪費である。戦争とともに長期建設と言うも、言うは易く実行は至難である。
 ドイツの今日あるはあの貧弱なる国土、恵まれざる資源に在ったとも言える。即ち被封鎖状態が彼らの科学を進歩せしめた。資源もちろん重要であるが、今日の文明は既に大抵の物は科学の力により生産し得るに至りつつある。資源以上に重要なるものは人の力であり、科学の力である。日、満両国だけでも資源はすばらしく豊富にある。殊にその地理的配置が宜しい。我らが科学の力を十二分に活用し、全国力を綜合的に運用し得たならば、必ずや近き将来断じて覇道主義に劣らざる力を獲得し得るであろう。
 鉄資源としては日本は砂鉄は世界無比豊富であり、満州国の鉄はその埋蔵量莫大である。精錬法も熔鉱炉を要しない高周波や上島式の如き世界独特の方法が続々発明せられている。石炭は無尽蔵であり、液化の方法についても福島県下に於て実験中の田崎式は必ず大成功をする事と信ずる。その他幾多の方法が発明の途上にあるであろう。熱河から陜西、四川にわたる地区は世界的油脈であると推定している有力者もあると聞く。断固試掘すべきである。
 その他必要な資材は何れも必ず生産し得られる。機械工業についても断じて悲観は無用である。天才人を発見し、天才人を充分に活動せしむべきである。
 国家が生産目標を秘密にするのは一考を要する。ソ連さえ発表して来た。国民の統制完全であり、戦争目的第一であるドイツは機密としたが、日本の現状はむしろ勇敢に必要の数を公表し、国民に如何に彪大な生産を要望せらるるかを明らかにすべきであると信ずる。国民の緊張、節約等は適切なるこの国家目標の明示により最もよく実現せらるるであろう。今日のやり方は動《やや》もすれば百年の準備あ
前へ 次へ
全160ページ中156ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
石原 莞爾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング