とも思っているんです。」と、お庄は思い断《き》って伯母や糺にも、自分の心持を打ち明けてみたが、二人ともあまり真面目に聞いてもくれなかった。
「そんなことを言って、今家へなんか帰ってどうするつもりだい。」と、伯母は頭ごなしに言って、先の家の深い事情などは、ろくろく考えもしないらしかった。
「むやみなことをして、中へ入った浅山の顔を潰《つぶ》すようでも悪いじゃないか。」と、糺も言った。
 始終聞きたい聞きたいと思い続けていた磯野やお増のことを、お庄は時々言い出そうとしたが、それも詳しくは二人の口から聞き出すことが出来なかった。
「何だかまた別れたとかいう話だぜ。」と言って糺は笑っていた。
 芳村が前からよく行きつけていた碁会所の娘と約束が出来て、そこへ荷物を持ち込んで引っ越すようになってから、お増がまた気を焦《あせ》って、このごろでは磯野の手を離れて、芳村との関係が旧《もと》へ復《かえ》ったとか、芳村がお増をどこかに隠しておくとかいうことだけは、糺の話でも解った。お庄は磯野と自分との縁が、またどこかで繋がれていそうな気もして、もどかしいようであったが、こっちから訪ねて行く心にもなれなかった。
 お庄は、叔父がいよいよ田舎へ帰るようになったら、ちょっと報《しら》してほしいとそのことを母親に頼んで帰って行ったが、途中で小石川の伝通院前の赤門の家で占いの名人のあるということを想い出して、ふとそこへ行って観《み》てもらう気になった。占いやお神籤《みくじ》はこれまでにも、たびたび引いて見たことがある。磯野との縁が切れそうになった時も、わざわざ水天宮で御籤《みくじ》を引いた。その時の籤はそんなに悪くもなかったが、三十過ぎるまでは、心に苦労が絶えないというようなことは、一、二度|売卜者《うらない》にも聞かされた。着ることや食うことには大して不足もないが、処《お》るところがまだ決まらないというようなことも言われた。
 赤門ではその日がちょうど休日《やすみ》であった。お庄はさらに伝通院横にある、大黒の小さいお寺へ行って、そこに出張っている法師《ぼうず》に見てもらうことにした。
 派手な衣を着けて、顔のてらてらしたその法師《ぼうず》は、じろじろお庄の顔を見い見い水晶《すいしょう》の数珠玉《じゅずだま》などを数えていたが、示されたことはあまり望ましいことでもなかった。法師は古びた易書を繰って
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