しより》に替って、患者の傍の椅子に腰かけた。
 夜明け方から、叔母の様子があやしくなって来た。寝台に倚《よ》りかかって、疲れてうとうとしていたお庄が目をさますと、看護婦が出たり入ったりしていた。助手も注射器を持って入って来た。
 お庄は外の白《しら》むのを待って、俥を築地へ走らせた。

     四十七

 家の戸がまだ締っていた。格子戸も板戸も開かなかった。お庄は俥屋を表に待たしておいて、裏口へ廻って、母親を呼んだ。母親は「おいおい。」と返辞をしながら出て来た。
「どうしたえ。お此さんの容体がまた悪いだか。」母親は台所の框《かまち》に腰掛けて訊いた。
 お庄も懈《だる》い体を水口の柱に凭《もた》せかけながら、叔母の容態を話した。
「それじゃとうとう駄目だかな。」と、母親はがっかりしたように言って、天窓を引いたり、窓を開けたりした。
「それでもまあ保《も》った方さ。あのくらいにして駄目なのなら、よくよく寿命がないのだ……。」
 叔父がまた家を開けていた。
「丸山さんへ行って、花でも引いているら。」と母親は昨夜《ゆうべ》も二時ごろまで待たされたことを話しながら、床をあげたり、板戸を開けたりした。
 お庄は人気のない家のなかを、落ち着かぬ風であっちゆきこっち行きしていた。葬式《とむらい》や骨《こつ》あげに着て行く自分の着物のことなどが気にかかった。田舎から来る、叔母の身内の人たちの前も、あまり見すぼらしい身装《みなり》はしたくないと想《おも》った。
 母親とお庄は、奥座敷の箪笥の前に立っていながら、そのことについていろいろと相談した。
「なあに間に合うて。今日の午前《ひるまえ》に目を落したって、葬式《とむらい》は明後日《あさって》だもんだで……それも紋を染めていたじゃ間に合いもすまいけれど、婚礼というじゃなし石無地《こくむじ》でも用は十分足りるでね。それでなけれアお此さんの絽《ろ》の方のを直すだけれどな。」
 母親は落ち着きはらって、いろいろの見積りを立てていた。
 とにかくお庄は、叔父を捜しに出かけることにした。入舟町の方から渡って行く中ノ橋あたりは、まだ朝濛靄《あさもや》が深く、人通りも少かった。その家では、女中と娘の子とが起きているぎりで、遊びに疲れた主人夫婦も叔父も、今ようやく寝たばかりのところであった。叔父のたおれている座敷には、帯や時計や紙入れや飲食いした死
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