へ湯治に行っていたりした為だというのであったが、それから程なく、鶴さんの留守の間《ま》に北海道から入って来た数通の手紙の一つが、旅で馴染《なじみ》になった女からであることが、その手紙の表記《うわがき》でお島にも容易《たやす》く感づけた。
帰ってからも、そっちこっち飛歩いていて、碌々《ろくろく》旅の話一つしんみり為《し》ようともしなかった鶴さんが、ある日帳簿などを調べたところによると、お島はお島だけで、留守中に可也《かなり》販路を拡めていることが解って来たが、それは率《おおむ》ね金払いのわるいような家ばかりであった。これまでに鶴さんが手をやいた質《たち》の悪い向《むき》も二三軒あったが、中にはまたお島が古くから知っている堅い屋敷などもあった。お島は少しでも手繋《てがかり》のあるようなそれ等の家から、食料品の註文を取ることが、留守中の毎日々々の仕事であったが、品物ばかり出て勘定の滞っているのが、其方《そっち》にも此方《こっち》にも発見せられた。
悪阻《つわり》などのために、夏中|動《やや》もするとお島は店へも顔を出さず、二階に床を敷いて、一日寝て暮すような日が多かったが、気分の好い時で
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