の山が、それでもまだ残っていると云うのであった。その山を売りさえすれば、多少《いくらか》の金が手につくというのであった。そしてそうさせるには、二人で機嫌《きげん》を取って、父親を悦《よろこ》ばせてやらなければならないのである。
「そんな気の長いことを言っていた日には、いつ立てるか解りやしないじゃないか」
お島はその晩も二階で小野田と言争った。時々他国の書生や勤め人をおいたりなどして、妹夫婦が細い生活の補助《たすけ》にしているその二階からは、町の活動写真のイルミネーションや、劇場の窓の明《あかり》などが能《よ》く見えた。四下《あたり》には若葉が日に日に繁《しげ》って、遠い田圃《たんぼ》からは、喧《かまびす》しい蛙《かえる》の声が、物悲しく聞えた。春の支度でやって来た二人には、ここの陽気はもう大分暑かった。小野田はホワイト一枚になって寝転んでいたが、昔住慣れた町で、巧く行きさえすれば、お島と二人でここで面白い暮しができそうに思えた。上海《シャンハイ》くんだりまで出かけて行くことが、重苦しい彼の心には億劫《おっくう》に想われはじめていた。
「厭《いや》なこった、こんな田舎の町なんか、成功し
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